2004年9月から全国4都市のギャラリーや施設などで世界中の音楽家と映像作家がコラボレートした作品を上映した、サウンドとビジュアルの可能性を提示するプロジェクト「SOUND×VISION」が、12月の東京開催にあたり、オープニング・イベントとして代官山UNITで「SOUND×VISION Night Sessions 2004」を行った。








展覧会で行われているサウンドとビジュアルの融合を、ライブでも観ることができ、黒川良一、パードン木村×宇川直宏を始めプロジェクトに関わるアーチストとプリストンガ(ピエール瀧×田中秀幸)With DJ Tasakaなど、サウンドとビジュアルを二つ併せて一つのパフォーマンスとして行うアーチストが参加。 またワークショップも行われ、こちらにはムーグ山本や高木正勝なども参加し、ライブパフォーマンスとワークショップ合わせると約12時間という比較的長いイベントだった。

普段の生活のなかで、サウンドとビジュアルを伴ったいわゆるメディア・アート的なものがテレビのブラウン管や街角にあるオーロラビジョン、また携帯の端末などからのべつまなく流れ出ている現在、積極的に参加する展覧会という場で観聴きする機会を持つことは観客として非常に良い姿勢であるが、さらにライブ・イベントというその場の空気感とリアルタイムに体感できる作り手側の一挙手一投足も同時にビジュアル表現として観れる場は展覧会とはまた違った興奮があるもので、映画館に行かずに映画のよさが分からないという、映画好きがいう言葉にどこか通じる所があるが、サウンドとビジュアルなのだから作家本人がその場にいるかいないか等はその作品にとってさして重要ではないという考え方もでき、現に映画も監督はその場にいないじゃないかという批判は置いておき、なおライブというもに執着するのは、その時その場でしか起こりえない現象に遭遇するという期待感とまさにその瞬間に立ち会えた時の特権的な体験に対する快感があるからで。つまり、作家本人の運動が生成する瞬間・一瞬が連続した時間、空間に立ち会えることへの興奮がある。そして、現在一つのシーンを形成し流通しているこのオーディオとビジュアルによる表現の一種が−クラブカルチャーから生まれたという側面も見逃すことはできない。





その身体運動の連続が生む場の空気感を凶暴性という要素も加味しビジュアルとサウンドで表現していたのが、パードン木村×宇川直宏だった。ビジュアルプレゼンターの上に置かれたノートにマジックやステッカーを使いリアルタイムにイラストを描画してはノートをめくり、その一連の動きと経過が、一度電気的な信号に変更されプロジェクターでスクリーンに投影される。一方パードン木村は、一見○人28号のコントローラーを思わせるジェラルミンケースのような箱に埋め込まれた機材のつまみを操作し、狂っているのだがどこか愛嬌のある電子音を真剣というには余りにも面妖な面持ちで淡々と生成し続ける。





途中、DVDJを使い、予め用意していたビジュアルとサウンドをスクラッチして見せたりする。また、某有名週刊誌や○ウンページを取り出し、溢れかえる日本語の活字をメッセージとして暴力的に即興サンプリングするさまは、現世に漂う情報という魂を憑依させる霊媒師のようにさえ思える。という、この二人と初めはどのように対処したらよいか迷いがあった観客がどんどんパフォーマンスに引き込まれ、パードン木村、宇川直宏、観客の三位一体でもって、ある意味フロアを霊的な場へと変容させた瞬間はクラブでサウンドとビジュアルを体験する一つの醍醐味で、どれか一つかけても成しえない時間で作品のクオリティを超えてしまう、まさにクラブ的といっていいライブ・パフォーマンスだった。





他に、黒川良一のラップトップから出力される電子音と映像を同時に操り繊細な質感として重ねていくさまは、上の二人とは対象的に緊張感のある静かなライブだった。それは、単にコンピューターから出力するだけに留まらず、DVD「SOUND×VISION」の宇川直宏のインタビューでも指摘されているように、まぎれなく黒川良一の手、マウスをクリックする運動から操作されたイメージであり、一人の作家が描くサウンドとビジュアルがやはり身体というアナログなものをから作り出されるという事実をライブという場ではより明確に感じることができた。





イベントの最後に演じたDEATH TECHNICA(伊東篤宏・宇治野宗輝)が、フードミキサーやターンテーブルなどを使用しノイズを発生させ、蛍光管がある周波数にシンクロし発光する様子は、サウンドとビジュアルを音(ノイズ)と光という最小単位まで解体してある意味ラディカルに表現しているともいえた。

DVDの普及によって、コンテンツの充実と共に容易に世界中のクオリティの高い、オーディオとビジュアルの可能性を追求した作品をパーソナル環境で観賞することができるいま、クラブなどの空間で通常行われているような単に演奏家・DJ・VJがオーディオとビジュアルをその場限りで消費するようなイベントでは観客に対して大画面でそれなりの音響設備があるという環境を加味しても説得力を持ち得ない現在、演奏家、映像作家、またサウンドとビジュアルを同時に扱う作家による確固たるコンセプトのもと行われるライブパフォーマンスが、クラブ・カルチャーが生んだサウンドとビジュアルの同時性によるアートと空間という概念を推し進める上で重要であり、「SOUND×VISION Night Sessions 2004」は自覚的にそういったことも含めて、サウンドとオーディオに向きあっていたイベントではないだろうか。



SOUND×VISION Night Sessions 2004
日時:2004年12月3日(金)
会場:代官山UNIT

SOUND×VISION 2004 東京
会期:2004年12月3日(金)〜12月12日(日)
会場:ラフォーレミュージアム原宿
http://www.soundxvision.com


Text and Photos: Yasuharu Motomiya from Nordform
















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